浪人したので、高校の友人から1年遅れで自動車免許をとった僕は、
取得したその日に、大事故を起こした。
事故の顛末は、こうだ。
免許をとってうれしくなった僕は、その晩、高校の友人と待ち合わせて、
それぞれの車でドライブに行った。
見た目で坊ちゃんぽいと言われることが多かったので、そのギャップ
が笑えるかなという考えから、シャレで、義呂珍(ギロチン)という
暴走族気取りのチーム名をつけた。
チームの構成員は、僕一人。よって総長。が、車はまだない。
親父殿の車を勝手に拝借し、そこら中を走り回って、もう帰ろうかと
なったとき、その友人が、帰り道を教えてやるからついてこいといって、
前を走った。
それがとんでもないスピードだったが、免許取り立てとはいえ、
ギロチンの総長であるから、負けるわけにはイカンと思った僕は、
床も抜けよとばかりにアクセルを踏み続けた。
街頭もない周りが田んぼの30km道路で、行く先は直角カーブだった。
前を行く友人の車のテールランプがフッと消え、アッと思ったときは、
時既に遅し。
フルブレーキングしたが、まるで止まらず、そのまま壁に突っ込んだ。
当時、ABSはなかった。あったとしても関係ないくらいの速度だったと思う。
気がつくと、助手席の床は抜け地面が見え、ボンネットからは今にも爆発
しそうな煙があがっている。
目の前では、民家の塀が崩れている。
幸い外傷は無かったが、救急車が呼ばれ、念のため病院に連れて行かれた。
あとで聞いたら、壁の被害は、60万円、車は、新車で200万くらいだった。
免許をとったばっかりだったので、無保険だ。
つまり、借金260万円
それをどうしたのかは、いずれ機会があれば話そう。
とにかく、親には顔向けできない状況になったため、まったくの無傷だったが、
この危機をやりすごすため、ムチウチ用のコルセットをし、無口な人になった。
それは、精神的、肉体的にダメージを受けてますよ作戦で、狙った効果は、
”怒られるコトを先延ばし”である。
ある程度見破られてはいたものの、生きててヨカッタ的なムードも流れ、効果はあった。
そのころ、事故時に先導していた友人が、コトの顛末を新聞報道の事故記事に
みたてた文書を作成し、友人どもに配り歩いていた。
書き方が猛烈に面白かったので、あっという間に友人達に広まり、先導した責任を
感じていないのかと憤慨したが、自分も何度もその文書を読んで笑った。
そうするうちに、笑いは自分の心を癒していることに気付いた。
それで、毎回会う人ごとにおもしろおかしくこの件を話すことにすると
開き直りからか、気分がどんどん楽になっていった。
(逆に親の気分は、どんどん悪くなっていったに違いないと思われる。)
そのうち、事故をおこしてしょんぼりした知り合いから、事故後の気持ちの
処理はどうしたらいいのか?という相談の電話が入り、事故相談窓口じゃねー
と思いながらも、ネタにして復活せよとアドバイスをしてあげると、彼は救われた
ようだった。そして、彼とはとても仲良くなった。
その後、その彼の高校時代の友達を紹介され、その友人とも仲良くなった。
それが今のCTOだ。
CTOに出会わなければ、アンカットテクノロジーは確実にないと言える。
だから、あの事故がなければ、この会社はなかった。
かもしれない。
ちなみに
先導をして事故のきっかけを作り、新聞記事を模倣した文章を書き、噂を
広めた男は、本物の新聞記事を書いている。
