純一の家庭教師は、週に2回から3回やりました。
彼はお金に無頓着で、いつも机の上に小銭の山ができていました。
多くは500円玉だったので、かなりの金額でしょう。
あるとき僕が、片付けろというと、
「いいんだよ。どーせ小銭だから。先生、なんかジュースとか飲みたかったら
こっからもっていっていいぜ。」
と彼は言いました。僕は唖然としながら、
「いらねー、あと、お前の家では、ジュース売ってねぇ!」
と答えると、純一はとても感心したように、しきりとうなづきながら、
なるほど確かに売ってないなぁとぶつぶつと言ってました。
恐らく、彼にとっては小銭は小銭でしかないのでしょう。
僕が教え子からお金をもらうのを拒否したのではなく、
ジュースが売っていないからいらないんだ
と本気で思っているようでした。
最初の月末がきたとき、純一のお母さんに呼ばれ、
今月分ねと言われて、給料の入った封筒を渡されました。
僕は、ありがとうございますといいつつ中を確認したところ、
7万円だったはずが、10万円入っていたので、
正直ものの僕は思わず、「これは多くないですか?」と聞きました。
お母さんは、いいからって感じで、犬を追いやるように手を振り、
くるっと背中を向けてキッチンの方にいってしまいました。
その態度が、なんとなくめぐんでやった感を醸し出し、若干僕のプライドを傷つけましたが、
お金の魅力というのはたいしたもので、
これじゃあ、純一もお金に無頓着になるはずだなぁと思いつつ、うかれ気味に帰路につきました。
しばらくしたころ、机の上の大量の500円玉達がみるみる減った時期がありました。
ある日、あとかたもなくなくなっていたので、純一に片付けたのかと聞くと、
「そうじゃねーよ、先生、マジ金がないんだよ。親が全然小遣いくれなくなったんだ。
どうしよう、俺、おわったよ。先生。」
というので、
「お前さ、結構、金に無頓着だろ?お前の服のポケット全部調べろ、あとなんか知らないけど親に謝れ、以上。」
といって帰りました。
その次の家庭教師の日、会うなり笑顔で純一は言いました。
「先生!先生のいうとおり、調べたら、スゲー出てきたよ。」
「そうか、ヨカッタな、んで、いくらあった?」
「うん、10万くらいあった」
「なるほど...思ったよりあったな....」
「先生、スゲーよ。まじで。頭いいね。」
ε=ε=(;´Д`)
それはまったく違う。
